炭素耕作で生成する温室効果ガスと廃棄物処理技術の確立

持続可能な耕作に基づく炭素循環型社会実現のためには、炭素耕作を実施するサイトから発生するメタンや亜酸化窒素(N₂O)といった温室効果ガスの削減を行いながら、作物の生産をしていく必要があります。これに加え、燃料生産や材料開発で発生する利用困難な廃棄物の処理、さらには廃棄物から有価物を産生する新しい静脈産業をベースとしたサプライチェーンの確立が求められています。さらに、持続可能な耕作に基づく新しい炭素循環には、窒素やリンなどの栄養塩成分が絡み合うため、窒素・リンの循環を並行して進めていく必要があります。以上を鑑みると、炭素耕作をベースとする温室効果ガス削減と循環型社会の実現には、水田からの温室効果ガス削減技術の構築と窒素・リンの健全な循環を含めた新たな環境的価値を創出する革新的な廃棄物リサイクルシステムの構築(SDGs 12.3~5)が必須であると言えます。課題4ではこれらの目的達成のため、以下の5点の研究項目に取り組んでいきます。

①発酵残渣・炭化物施用による水管理を融合した水稲栽培における温室効果ガスの削減

炭素耕作を実施するサイトとして水田にターゲットを絞り、温室効果ガス排出量を極力抑えた水稲栽培方法の研究を進めます。具体的には、発酵残渣と炭化物を施肥する方法、およびIoTや機械学習を導入した節水管理方法を融合します。施肥するバイオマスは、稲わらに含まれる有機物を嫌気微生物群により分解させた残渣(発酵残渣)と、発酵残渣から作製した炭化物であり、CO₂やCH₄排出の抑制に有効です。また、IoTや機械学習による省水型水管理では、N₂Oの排出削減にも取り組みます。メタン発酵残渣と炭化物の適切な施肥、水管理を融合することにより、水稲栽培中のメタンとN₂Oの大幅な削減を目指します。

②バイオマス利用残渣と畜産廃棄物の混合廃棄物等からの高効率バイオガス回収技術の確立

水田から刈り取られる稲わらなどの草本系バイオマス、都市生ごみや、畜産業・食品産業からの廃棄物を混ぜ合わせ、高効率・高速にメタンを生成・回収するメタン発酵技術を確立します。各バイオマスに偏った有機物・窒素の割合を異なる廃棄物のソースを混ぜ合わせることにより調整し、メタン発酵の高効率化を図ります。また、嫌気発酵では二酸化炭素とメタンが生成されますが、メタンを濃縮可能なガス分離膜を組み合わせたメタン発酵システムの開発を目指します。高純度なメタンガスは、発電や有価物産生に必要な原料として利用します。

③メタン発酵残渣の炭化による吸着剤としての利用技術の確立

メタン発酵で廃棄される残渣を炭化し、窒素・リンを吸着回収する吸着材を開発します。この吸着材を窒素・リンを高濃度に含む畜舎排水に沈めることで、窒素・リンを高濃度に保持させることが期待されます。窒素・リンを濃縮させた吸着剤を水田に施肥した際の効果や緩効性肥料としての性能、水稲栽培時のメタン排出削減への寄与を評価します。一方、炭化物を製造する際には乾燥など加熱が必要です。この際、エネルギーを消費することになり、CO₂の排出につながることが懸念されます。このような懸案事項を回避する方法として、バイオガス発電の廃熱の利用による炭化を行うシステムを検討します。新しいシステムの導入により、化石燃料の消費を抑えることを目指します。
 さらに、吸着剤の改質にも取り組みます。バイオマス由来の炭化物は、アンモニアの吸着能力に長けていますが、リンの吸着能力は性能改善が必要です。そこで、アンモニアとリンを同時吸着できる吸着剤の開発を目指します。

④メタン・窒素・リンを用いたアップサイクリング技術の確立

②で開発する高効率バイオガス回収技術から回収されるメタンと、液体として排出される窒素・リンを高濃度に含む消化脱離液を用い、高価値の物質産生に向けたアップサイクリング技術の確立に取り組みます。まずは物質産生を行うユニークな細菌群の獲得を行います。次に、このアップサイクリング技術を導入し、水田・畜産業に新たなループを加え、物質産生という点で新価値を生み出します。具体的には、タンパクを豊富に含む微生物群集による微生物タンパク質の産生や市場価値の高い物質の産生を行い、新たなサプライチェーン創出を目指します。

⑤温室効果ガス・栄養塩を考慮した物質循環モデルの構築

水稲栽培中に発生する温室効果ガスの排出量をフットプリントとして査定します。持続可能な耕作に基づく炭素循環型社会の実現、ならびに温室効果ガスの削減には、研究項目①-④でそれぞれ開発する新技術がもたらすメリット・実現可能性を明らかにすることが必要になります。そこで、窒素・リンや温室効果ガス排出を組み込んだ物質循環モデルを構築し、①の水田耕作から④のアップサイクリング技術まで垂直統合させた評価を実施します。ライフサイクルアセスメントの視点からの温室効果ガス排出に関する評価や、リスクトレードオフの視点からの③の炭化物利用や④の有価物創出のメリット・デメリットを明らかにし、実用化に向けた課題抽出や適用できるシナリオを提案します。

研究体制

プロジェクトリーダー

研究開発リーダー

寺田 昭彦

東京農工大学 大学院工学研究院 教授

構成メンバー

プロジェクトメンバー

利谷 翔平

東京農工大学 大学院工学研究院
准教授

プロジェクトメンバー

林 彬勒

産業技術総合研究所 安全科学研究部門
上級主任研究員

プロジェクトメンバー

薛 面強 Mianqiang Xue

産業技術総合研究所 安全科学研究部門
主任研究員

伏見 千尋

東京農工大学 大学院工学研究院
教授

参画企業

三菱ケミカル

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