炭素耕作による燃料生産技術の確立

炭素循環型社会では、炭素耕作で生産されたバイオマスを化石資源に代わるエネルギー源として利用する。バイオマスは安定的な再生可能エネルギーとなり得るが、大量調達が難しいことが課題である。そのため、特にエネルギー事業者・大規模需要者が求める多様なバイオマスから高い効率で燃料を生産する技術の確立と、バイオマス利用の特性を生かした地域生活者のための地産地消エネルギーシステムの構築がエネルギー戦略的に重要となる。

水素は燃焼時に水しか生成しないこと、再生可能エネルギーを含む多様なエネルギー源からの生産・貯蔵・運搬が可能なこと、電力、運輸、熱・産業プロセスのあらゆる分野に利用することで脱炭素化が可能なこと、などから、究極のクリーンエネルギーとして期待されている。しかしながら、現行の主要な水素製造技術は化石エネルギーを原料とするため、これに由来するCO₂の排出が大きな課題となる。日本では、2017年に再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議において「水素基本戦略」が策定され、その中で、2050年を見据えた中長期の水素社会の実現、水素利用の本格普及のためには、水素の製造、輸送・貯蔵、利用に至るまで、広範な革新的技術の着実な開発が必要とされている。また、2021年には、米国エネルギー省が「Energy Earthshots Initiative」を立ち上げ、第1弾の「Hydrogen Shot」で野心的なCO₂フリー水素のコスト目標(10年以内に80%削減)を打ち上げるなど、世界各国で水素国家戦略が一気に動き出している。バイオマスは安定した水素の原料として期待されており、バイオマスのガス化や熱分解、水蒸気改質などの熱化学的変換による水素生産技術や微生物による発酵水素生産技術の開発が進められている。

このような背景の下、本研究では、バイオマスを原料としたCO₂フリー水素生産プロセスの開発を中長期的課題、これと共通の基盤技術を利用した液体燃料生産プロセスの開発を短中期的な課題とする。

バイオマス燃料生産技術の社会実装には生産コストの低減が重要な課題である。また、バイオマス原料の成分は多様であり、その組成は原料の種類によって大きく異なるため、画一的な技術で広範な需要を満たすのは難しく、これらの課題解決には、多様な熱化学及び生物学的変換技術の比較検討に基づく技術の選抜・融合・革新が必要となる。本研究開発では、そのような異分野の技術開発を一体的に進め、地域/原料に合わせた柔軟なバイオマス燃料供給システムの構築・拡張を可能にする。

関連する研究テーマ

研究体制

プロジェクトリーダー

研究開発リーダー

乾 将行

地球環境産業技術研究機構 主席研究員

構成メンバー

プロジェクトメンバー

銭 衛華

東京農工大学 教授

プロジェクトメンバー

官 国清

弘前大学 教授

プロジェクトメンバー

寺本 陽彦

地球環境産業技術研究機構 副主席研究員

参画機関

津軽バイオマスエナジー

エンバイオ・エンジニアリング

大陽日酸

青森県つがる市

青森県大鰐町

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