研究内容

図

本研究テーマでは、バイオマスの糖化により得られた原料を主な対象とし、マイクロ波加熱化学反応技術や界面化学技術を駆使し、特に衛生用品や機能性材料等に用いられるポリマー・化学品の開発を行う。我々はこれまでに、有機合成や高分子合成の効率化に取り組む中で、マイクロ波加熱を積極的に利用してきた。特に、エステル化などの縮合反応や、イオン性の基質が関わる反応ではその効果が大きく、ラボレベルの反応条件最適化から始め、実機までを想定した試験などを重ねている。

工業、とりわけ大量生産品製造や石油分野では多量のエネルギーが消費され続けている。再生可能原料で石油を置き換える取り組みも、いくら原料部分でエネルギーを削減できても、製造時に大量の石油を使用しているという指摘がある。本プロジェクトでは、糖質や糖質から変換されるモノマー原料から変換される化学品の開発・生産工程またはその一部をマイクロ波方式に置き換え、持続可能なバイオマス製品の開発を支援する。

マイクロ波方式を用いた生産には、省エネ以外の利点もある。マイクロ波加熱は高温であっても短時間で済み、従来加熱のように容器壁や熱媒体から過剰な熱を受ける心配がなく、被加熱物に対する熱履歴による影響が少なくなる。そのため、生成物の着色や望まない副生物(副反応により生成する異種構造に起因)の生成が抑えられ、結果としてより高品質の製品が特別な苦労なしに製造できる。反応の副生物が少なければ、後工程において不純物を取り除く必要がなくなったり精製回数や廃液を減らすなど、効率的に高品質品を生産でき、上位グレードの製品が開発できると期待している。

また、本プロジェクトでは、チームが得意としている界面化学の知見を活かし、バイオサーファクタントの開発も行っていく。海洋分解性・各種機能性抗菌・抗カビ・抗ウイルス性材料の開発・評価に取り組み、環境に優しく持続可能な循環型生活様式の提案に繋がる化学製品の実用化を目指す。

研究者

プロジェクトメンバー

長畑 律子

産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門
主任研究員

プロジェクトメンバー

平 敏彰

産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門
主任研究員

プロジェクトメンバー

竹内 和彦

産業技術総合研究所 化学プロセス研究部門
職員

プロジェクトメンバー

道信 剛志

東京科学大学 物質理工学院
材料系 教授

参画機関

AGC

四国計測工業

論文

  1. Nagahata, R., Mori, Y., Saito, Y., Takeuchi, K., Shimizu, Y., Shimizu, M., Benioub, R. Efficient carbothermal reduction of diatomaceous earth to silicon using microwave heating. Mater. Chem. Phys., 257, 123744. (2021).
  2. Nagahata, R., Takeuchi, K. Encouragements for the Use of Microwaves in Industrial Chemistry. Chem. Rec., 19, 51–64. (2019).
  3. Nagahata, R., Nakamura, T., Takeuchi, K. Microwave-assisted Rapid Synthesis of Poly(butylene succinate): Principal Effect of Microwave Irradiation for Acceleration of the Polycondensation Reaction. Polym. J., 50, 347-354. (2018).
  4. Nagahata, R., Nakamura, T., Mori, Y., Takeuchi, K. Microwave-Assisted Facile and Rapid Esterification of Amino Acids I: Esterification of L-Leucine from Batch to Flow Processes and Scale-Up. Natural Science, 9(4), 110-122. (2017).
  5. 長畑 律子、竹内 和彦,困らない!マイクロ波サイエンスとエンジニアリング 第三章「マイクロ波エンジニアリング」,S&T出版株式会社(2018)
  6. 長畑 律子、竹内 和彦,最新 マイクロ波エネルギーと応用技術,マイクロ波化学,産業技術サービスセンター(2014)
  7. 長畑 律子、竹内 和彦,マイクロ波化学プロセス技術Ⅱ,第1編 第4章 実用化への道,シーエムシー出版(2013)
  8. Taira, T., Yanagisawa, S., Imura, T. Influence of inorganic and organic counter-cations on the surface properties and self-assembly of cyclic lipopeptide surfactin. Colloids Surf. A, 626 (2021), 126973.
  9. Taira, T., Yanagimoto, T., Sakai, K., Sakai, H., Imura, T. Au(I)-, Ag(I)-, and Pd(II)-coordination-driven diverse self-assembly of an N-heterocyclic carbene-based amphiphile. RSC Adv., 11 (2021), 17865–17870.
  10. Taira, T., Yanagimoto, T., Fouquet, T., Sakai, K., Sakai, H., Imura, T. Synthesis of an N-Heterocyclic Carbene-based Au(I) Coordinate Surfactant: Application for Alkyne Hydration Based on Au Nanoparticle Formation. J. Oleo Sci., 69 (2020), 871–882.
  11. Taira, T., Yanagisawa, S., Nagano, T., Tsuji, T., Endo, A., Imura, T. pH-induced conformational change of natural cyclic lipopeptide surfactin and the effect on protease activity. Colloids Surf. B, 156 (2017), 382–387.
  12. Taira, T., Yanagimoto, T., Sakai, K., Sakai, H., Endo, A., Imura, T. Synthesis of surface-active N-heterocyclic carbene ligand and its Pd-catalyzed aqueous Mizoroki–Heck reaction. Tetrahedron, 72 (2016), 4117–4122.
  13. Taira, T., Yanagisawa, S., Nagano, T., Zhu, Y., Kuroiwa, T., Koumura, N., Kitamoto, D., Imura, T. Selective encapsulation of cesium ions using the cyclic peptide moiety of surfactin: Highly efficient removal based on an aqueous giant micellar system. Colloids Surf. B, 134 (2015), 59–64.
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