藻類バイオマスは食糧との競合がなく、陸生植物と比較して格段に高いオイル生産性を有することから、原料需要に依存しない次世代のエネルギー資源として期待される。藻類は水圏で増殖するウェットバイオマスであり、増殖には膨大な水資源が必要となる。また、エネルギー需要を満たす規模の培養を可能にするためには広大な土地利用が必須である。水源および農地面積に限りにある我が国においては、周囲を取り囲む海洋の利用が微細藻類バイオマス生産の必然的な選択肢といえる。これまでに、オイル生産性の優れる海洋微細藻類を見出し、様々なバイオリアクタを用いて、天然海水をベースとした培地で大量培養することに成功している(図1)。パイロットスケールでの培養には40 kLから640 kLまでスケールアップができるよう段階的なプロセス設計を行い、各ステップで安定的なバイオマス生産を実現している。
下水排水の中には、窒素やリンといった生物生産に欠かせない元素が大量に存在する。例えば、資源の枯渇が懸念されているリンは、日本において年間46.7 ktが下水排水に流入しており、リン鉱石として輸入しているリン量を上回っている。このような排水中に流入した有用元素を活用し、微細藻類を培養し、炭酸固定の効率化や有用物質生産への応用を進めている(図2)。微細藻類のCO2吸収能を最大限高めるための資材開発に着手しており、微細藻類が来るべき炭素耕作社会において中心的な役割を果たすホストとして利用することを期待している。これまでに、東京農工大学が保有する微細藻類カルチャーコレクションより上記目的に適した微細藻類を網羅的に探索しており、下水排水中でも良好に生育できる NKG400013株、NKG021201株、NKH13株などを得ている。これらの株は、未処理の排水の水質浄化と、バイオ燃料原料の生産を同時に達成できる。